エキセントリック日本ファン

日系のお店で働くようになって、異常なほど日本に情熱を持ってるイギリス人と出会う回数が増えるようになりました。
彼らは普段はごく普通の良識ある大人なのですが、いったん日本を語りだしたら最後、たがが外れたように延々としゃべり続け、誰も止めることはできません。そして、彼らは日本を語れるどんなにわずかなチャンスも逃すことなく、気が付けばすっかり自分のペースに相手を陥れるのです。

ある日のこと。
私がお店でぱたぱたと働いていると、突然50代前半と思われる中年男性とぱっと目が合いました。そこで私がとっさに営業スマイルを見せるよりも早く、その男性は満面の笑みをうかべ、ものすごい早足でフロアを横切り、一直線に私に近づいてきました。
そして、わたしが「あれ?知り合いだったかしら???」と記憶の底引き網を必死にたぐろうと脳みそをフル回転させるよりもさらに早く、彼はガッシと私の手を握ると

「ハッロ〜〜っっ!あなた日本人でしょー!? ハジメマシテー!!」

とあっという間に「語りスイッチオン」状態に入りました。
もう誰も止めることはできません。
そのおやじは初めて日本の空港に降り立った瞬間のことから始まり、東京を拠点にあちこち(もちろん京都を含む)に旅行したこと、富士山を見たこと、などなどを怒涛の勢いで語りはじめました。
そして、夢中になっているので声がでかい。周りのお客さんがちらちらと視線を向けるのもものともせず(というか全く気づいていない)彼のジャパンストーリーはどんどんと熱くなっていきます。わたしは

「オオーーっ!シンカンセーーーンっっ!!ワンダホーーっ!!!」

と店内にわんわん響かせながら絶叫するおやじの前で、えへらえへらと相づちを打ち、ほほーっっと感心して見せることしかなすすべはないのでした。
しかし、面白いことに彼らはある程度語るだけ語って気が済むと、すぐにまた良識ある大人に戻ります。
そのおやじも気が済んだのか、
「いやー、お恥ずかしい。日本について話し出すとつい止まらなくなってね。はっはっはっ。じゃ、友人が待っているのでこれで。ば〜い!!」
とさわやかに去っていきました。
おそるべし“アイラブニッポン”パワー。彼らに恐いものなし。